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脱炭素社会とは「石油や石炭のような化石燃料を使わない社会」で、その目的は温室効果ガスの排出量をなくすことです。大気中には二酸化炭素やメタンなどのガスが含まれています。「温室効果ガス」と総称されるこれらの気体の問題は、本来であれば宇宙に放出されるはずの熱を閉じ込めて「地球を過度に温めてしまう」という点にあります。
温室効果ガスには太陽光の熱を地球に閉じ込めて地表を温める役割があります。温室効果ガスが完全に無くなると地球の表面温度はマイナス19度まで下がると考えられているので、ゼロにするわけにはいきません。何が問題かと言うと、社会活動によって排出される温室効果ガス多すぎるのです。温室効果ガスの濃度が高まると、熱がたまって気温が上昇します。結果、異常気象や気候変動のリスクが高まるのです。
石油や石炭が限りある資源である点も無視できません。使い続ければいずれ尽きてしまう資源です。そのため、脱炭素社会をめざす声は年々大きくなっています。
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを言います。日常生活・工場・自動車などで排出される出る人為的な温室効果ガス排出量から、植林や森林管理を通した吸収量を差し引いた合計値を実質的に0にしようという取り組みです。
排出量は現実的にみて0にはできません。人間や動物が呼吸をすれば二酸化炭素は出てきますし、各種の工場を停止すると人類の生活に大きな弊害が出ます。そこで、排出を防げない分を吸収か除去できれば「実質0」と捉えているのです。
カーボンニュートラルをめざした方法の1つが植物の光合成の利用や、炭素を回収して貯留できるCCS技術。また、私たち人類一人ひとりが意識的に温室効果ガスを減らす努力も必要です。それがカーボンニュートラルです。
脱炭素社会とカーボンニュートラルは目標と、それを達成するための取り組みと考えるといいでしょう。脱炭素社会とは温室効果ガスの排出量が0となった社会のことです。世界的な目標として、2015年にパリ協定という形で採択されました。ただし、各国に義務化されているわけではありません。
カーボンニュートラルは、脱炭素社会を実現するための具体的な取り組みです。二酸化炭素を吸収するための植林は、脱炭素社会実現のための具体的な取り組みといえます。脱炭素社会と似た言葉が「低炭素社会」。低炭素社会は、CO2排出量の減少を実現した社会で、脱炭素社会のように0をめざしているわけではありません。
エネルギー監視システムは、企業や組織がエネルギー消費を把握し、省エネやCO2排出削減に取り組むために有効なツールです。システムを導入することで、エネルギーの使用量や消費量の推移を可視化でき、エネルギー消費量が多い箇所や時間帯を把握し、改善点を見つけることができます。また、エネルギー監視システムを活用することで、省エネ策の効果を定量的に評価することができ、取り組みの成果を可視化することも可能です。
カーボンニュートラルは、企業や組織がCO2排出削減に取り組むための手段の一つで、自社のCO2排出量を削減することで、排出したCO2の量を抑え、残りのCO2を削減した分だけ、環境保全活動に投資することで、CO2排出量の総量をゼロにすることを目指します。カーボンニュートラルは、企業の社会的責任を果たすことができるだけでなく、CO2削減によるコスト削減効果も期待できます。
エネルギー監視システムを導入し、省エネやCO2排出削減に取り組むことで、企業や組織がカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めることができます。エネルギー監視システムとカーボンニュートラルの有効性を組み合わせることで、企業や組織が持続可能な社会の実現に向けた貢献をすることができます。
脱炭素社会の実現のために有効なツールのひとつがEMS(エネルギーマネジメントシステム)です。脱炭素社会の実現には二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの削減を意識的に行わなければなりません。そのためには「エネルギーの無駄づかいがどこで起きているのか」を把握するのが大切。EMSはエネルギーの使用状況を見える化できます。
EMSによって電力をはじめとするエネルギーの使用状況が見える化できれば、削減ポイントが明確に。さらにデータを分析すれば、なぜ無駄づかいが生まれているのかまでわかります。
エネルギーの消費が減れば、温室効果ガスの削減につながります。結果、脱炭素社会という大きな目標の達成に一歩近づくのです。
経済産業省の資源エネルギー庁では省エネのための補助金で企業をサポートしています。自社のみで設備を導入しようとしても、資金面がネックになりがち。その問題を国が補助してくれます。
例えば平成31年度には「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」及び「電力需要の低減に資する設備投資支援事業費補助金」がありました。
EMS設計や設備や工事まで幅広い部分でかかる費用をサポートしてくれます。
脱炭素社会を実現するには、温室効果ガスの減少の取り組みが必要です。減少を実現するには、エネルギーを見える化・分析を経ての削減が求められます。これを実現するシステムとして有効なのがEMSです。企業が導入するにあたって、国が補助金を出してくれる場合もあります。EMSを導入し、世界の企業とともに脱炭素社会の実現に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。
大企業ではなく中小企業が脱炭素社会に向けた取り組みを行うメリットについて紹介します。
SBT(Science Based Targets)に取り組む企業やRE100加盟企業が取引先の場合、脱炭素経営を行っていることがアピールポイントとなります。
特に、取引先が各業界のリーディングカンパニーのような大企業の場合、地球環境を考えた取り組みを積極的に行っていることも多くあります。そのため、脱炭素経営を行うことは、取り組んでいない競合他社に比べて優位性につながるのです。
また、環境問題に取り組んでいる企業として表彰されたりやメディア等で紹介されたりすれば、会社の認知度向上にもなるでしょう。
脱炭素経営を行うにあたって、まず見直すのがエネルギーコストです。光熱費や燃料費といったコストは、価格が上がるにしたがって温室効果ガスの発生量と比例します。
EMSを用いて無駄が無いか見える化し、省エネ設備を導入するなどの対策をしましょう。設備の導入にはイニシャルコストがかかりますが、補助金を活用すれば費用をおさえられます。
結果として、光熱費や燃料費といったエネルギーコストが削減できるのはもちろん、環境問題にも配慮できます。
脱炭素経営を行うことで、取り組みや理念に共感した人材が集まります。また、社内でも問題解決に動く姿勢に対して信頼感を持つ従業員が増えれば、モチベーションを維持しやすくなり、離職率をさげられるでしょう。
人材確保が課題となっている中小企業であれば、脱炭素経営に真摯に取り組むのも手かもしれません。脱炭素経営を行っていること内外にアピールして、取り組みの認知度も上げていくようにしましょう。
脱炭素に取り組む企業は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に入会している日本企業は570団体※1(2022年3月25日時点)、SBTは223社※2(2022年4月21日時点)、RE100は66社※3(2022年3月17日時点)となっています。
※1参照元:TCFDコンソーシアム|TCFDコンソーシアム会員一覧https://tcfd-consortium.jp/member_list
※2参照元:Ambitious corporate climate action - Science Based Targets|Companies taking actionhttps://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action
※3参照元:環境省|国際的な取組https://www.env.go.jp/policy/post_90.html
ここでは、さまざまな指標のなかからSBTの取り組み事例を紹介します。
大同トレーディング株式会社はプラスチック関連に特化した商社。従業員数15名、拠点数は2か所となっています。取り組みとして、社用車をEV車・ハイブリッド車に変えていくことにしました。また、プラスチックは石油由来の材料のため、バイオマスプラスチックといった新しい素材へシフトしていくことなどを盛り込み、目標の達成をめざしています。
セッツ株式会社は、洗浄剤や消毒剤、油脂製品の製造販売を行う会社です。脱炭素の取り組みとして、エネルギー使用の効率化や再生利用エネルギー(太陽光)の使用を取り組みとして提示しています。
※参照元:環境省|中小企業版SBT・RE100取組事例https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/intr_trends.html
脱炭素経営をはじめる場合、どのように達成率を図れば良いかがわからないこともあるでしょう。その場合は、SBTに取り組むのがおすすめです。
中小企業が脱炭素経営に取り組む際は、SBT(Science Based Targets)を指標にすると良いでしょう。SBTは温室効果ガスの排出削減目標です。パリ協定で定められた水準をもとに作られています。
SBTには、中小企業向けSBTとそれ以外とに分けられます。中小企業向けSBTで対象となるのは、従業員数が500人未満、非子会社の独立系企業です。
SBTは、企業自身で目標を設定し、それをクリアすることで認定が受けられます。中小企業向けSBTでは、基準年とされる2018年を起点に、2030年にかけて温室効果ガスの排出量を減らしていくのが主な取り組みとなります。
取り組みとして似ているものにRE100があります。自然エネルギーを取り入れる必要のあるRE100は、認知度や信頼度の高い企業であることや消費電力量が50GWh以上と、中小企業にはハードルの高い条件が課されているのが特徴です。
影響力や資金力に及ばない中小企業では、認定を受けるのが難しいため、RE100ではなくSBTをおすすめします。
ここからは、カーボンプライシングについて説明します。カーボンプライシングは、炭素に価格をつける仕組みを指す言葉です。炭素税や排出量取引制度、クレジット取引、炭素国境調査措置などがあります。
1990年代にフィンランドが炭素税を導入すると、立て続けに北欧諸国が導入。2021年時点で、46の国と35の地域がカーボンプライシングを導入しています。
炭素税は二酸化炭素の排出量に対して課税されます。日本では、「地球温暖化対策のための税(地球温暖化対策税)」として、化石燃料の利用に対して課税される仕組みです。
税負担額は、二酸化炭素の排出量1トンあたり289円(2022年4月現在)。石油、ガス、石炭それぞれで公平に徴収できるように、石油は760円/kl、が図は780円/t、石炭は670円/tとなっています。
化石燃料を使用すればするほど税負担も重くなることから、燃料効率の改善や再生可能エネルギーへの転換を促す狙いがあります。
決められた排出量上限を超えた企業が、超えていない企業から排出枠を購入するのが排出量取引制度です。国内排出量取引制度やキャップ・アンド・トレードとも呼ばれます。
取引される炭素の価格は、その時々の需要に合わせて決められる仕組みです。
排出量の上限を超えてしまうと罰則があるため、該当企業は排出量を削減するか、他社から枠を購入しなくてはいけません。また、企業によってはオフセットクレジットと呼ばれる排出削減プロジェクトの枠をオフセット用クレジットとして認証する制度が利用できます。
どちらにしても、自社内で削減できない限りは排出量取引にコストがかかり続けることになるため、積極的なアクションを取らざるを得ません。
対して、削減に成功している企業は、枠を売ることでプラスの利益が生まれます。
総排出量を変えずに、枠を売買しながら各企業が二酸化炭素の排出削減を行うことで、全体的に脱炭素社会をめざすのが目的です。
温室効果ガスの削減量を証書化して取引を行うのがクレジット取引です。日本では、非化石価値・Jクレジット制度・JCM(二国間クレジット制度)などが利用できます。
非化石価値は、電気エネルギーにおいて「二酸化炭素を排出しない」という価値を証書化したものを取引します。化石燃料由来ではなく、太陽光や風力などを用いた再生可能エネルギーから得られる電気に付けられる価値をもとに取引を行います。
Jクレジット制度は、温室効果ガスの削減量や吸収量を「クレジット」に認定して取引を行うものです。JCMは日本国内だけでなく、パートナー国との2国間で取引が行えるものを指します。排出量取引制度のように、削減で生まれた余剰分をクレジットとして売買し、排出上限枠を超えないようにしたり、削減目標数値にプラスしたりなどといった使い方がされます。
炭素国境調整措置は、日本国内と国外の炭素価格に差がある場合、それを均して炭素リーケージが起こらないようにする措置のこと。炭素リーケージとは、排出制限や炭素税などが課せられている国内製品が、そういった規制のない商品に押されて生産量が減るといった意味です。日本製品の国際競争力低下を防ぐための措置と言えます。
EUやアメリカがCBAM(国境炭素調整措置)の実施を検討していることから、世界的に脱炭素社会に向けて大きく舵を切ることが期待されている施策のため、炭素国境調整措置に期待するだけではなく、自社製品の脱炭素化や低炭素化を図ることが、競争力の維持にもつながってくるでしょう。
「エネ監ポータル」では、「自社の範囲に合わせたシステム導入をしたい」、「既存設備の流用がしたい」、 「他社システムとの連携がしたい」、という導入目的に当てはまるシステムを提供している会社を提供会社の分類から1社ずつご紹介します。
エネルギー監視システム用のソフト開発から、パッケージ化されたシステムの提供までを実施。ITを軸にした価値提供をしています。
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