省エネルギー法の改正にともない、工場でも省エネに関する取り組みが強く求められるようになりました。
こうしたなか、工場のエネルギー管理を担うシステムとして、「FEMS(Factory Energy Management System)」を導入する企業が増えているようです。
FEMSとは、工場を対象としたエネルギー監視システムのことです。照明や空調はもちろん、受配電設備や生産設備など工場内のさまざまな設備をネットワークでつなぎ、使用状況の確認や機器の制御など、工場のエネルギー管理をトータルで担うシステムになっています。
FEMSを導入することで、「工場全体のエネルギーの見える化」を実現でき、電力消費量の削減など無駄なエネルギーを抑えられるほか、生産計画の精度を向上させるといったことにも貢献します。
工場のエネルギー管理にFEMSを活用する際には、まず工場内で使用されている設備のなかから電力消費量を確認する設備をピックアップするところから始めます。大小さまざまな設備のなかでも、多くの人が使う稼働率の高い機器などエネルギー消費量の多い設備を選定しましょう。
機器を選んだら計測器を設置して、実際の電力消費量を計測します。これによって、消費電力を数値やデータで「見える化」できます。
その結果をもとに分析する際、重要なことは、製造に関わるスタッフ全員で意見交換をすること。「この設備を使う時間をずらせないか」「使っていない設備の消費電力が多いのはなぜか」など組織で話し合い、問題点を洗い出すことが大切です。
こうした管理組織を整備して問題点の確認をしたうえで、改善案の立案や具体的な計画を実行していくことによって、あらかじめ決めた省エネ目標の達成を目指せるようになります。
※参照元:一般社団法人日本電機工業会「FEMS導入の手引き」 https://www.jema-net.or.jp/jema/data/2009fems.pdf
製造業の省エネを成功させるには、まずエネルギーの見える化を推進が欠かせません。
エネルギー監視システムは様々な企業から提供されていますが、自社に合うシステムとはどんなものでしょうか。
そこで、エネルギーマネジメントシステムの専門ポータル「エネ監ポータル」では、各社を独自の視点で分類、比較してみました。
エネルギー見える化システム導入の業者選定でお役に立つコンテンツです。
エネルギー監視システムの
特徴・おすすめポイントを比較してみる
省エネ効果をできるだけ大きくするには、どのような施策を行うとよいのでしょうか。工場における省エネ施策をいくつか紹介しましょう。
デマンド監視装置とは、デマンド(最大需用電力)を把握することで電力の有効活用とコスト抑制を担う管理装置です。デマンド目標値をあらかじめ設定することで、その基準を超過する可能性があるときなど、警報やランプで知らせてくれます。
デマンドは、電気の基本料金を決める指標のひとつ。これを抑えることで契約電力をワンランク引き下げられ、基本料金の低減にもつながります。
工場で使用している変圧器を「トップランナー変圧器」に交換することも、省エネ効果を発揮します。トップランナー変圧器とは、従来製品より損失を抑えられる変圧器で、電力消費量を大きく削減できます。また、電力を効率的に活用できるため、変圧器の一部を運転休止にしても生産に影響が出ないといった節電効果も期待できます。
機器を制御する装置として、インバータを活用するのも効果的です。ファンやポンプなど3相誘導電動機を制御するのに適しており、エネルギーを「必要なときに必要な量だけ使用する」ことで、より効果的な省エネを実現します。
※参照元:[PDF]関西電気保安協会「省エネ講座 工場の省エネルギー」 https://www.ksdh.or.jp/pages/wp-content/uploads/2013/04/No122.pdf
FEMSの導入事例として、ここでは「日立製作所おおみか事業所(以下、おおみか事業所)」のケースを紹介しましょう。
省エネ対策を進めるにあたり、おおみか事業所では太陽光発電システムや蓄電池システムの導入に加え、FEMSによる電力可視化と空調制御を実施しました。
導入前は建屋単位でしか電力量を把握できなかったのですが、スマートメーターなどの計測器を屋内外約900カ所に設置し、施設全体で設備ごとの電力使用状況を確認できるように。さらに、電力使用状況はイントラホームページで「見える化」しました。また、空調機の高効率化、照明のLED化と照明設備Hfインバータ化など設備交換も実施しています。
こうした施策によって、電力コストは前年比で13%削減、エネルギー消費原単位は1%削減できました。
また、ピーク電力に近付くと経営陣から現場の作業者まで共通の課題意識を持って業務に当たれるようになったといった、副次効果も現れています。
※参照元:経済産業省資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/iso50001/case/no7hitachi.html
液体キャラメルとデザートミックスの製造を中核事業とする企業の事例です。製造部門の施設には3つのフロアがあり、製造専用エリア、原材料と最終製品の保管エリア、オフィスがあり、生産エリアで使用される主要なエネルギーである電力使用量を削減し、コストを大幅に削減する方法を模索していました。
現状の設備、プロセス、建物の効率を判断するために、事前にエネルギー監査がおこなわれました。結果、エネルギー監査後に特定された内容に基づき、建物のさまざまなエリアに合わせて照明を調整し、使用する照明の種類を新しくする、無効電力によるコストを削減などの改善により、エネルギー消費が改善。
また、エネルギー管理ソフトウェアの可能性を最大限に引き出すために、EMSに関するトレーニングを全スタッフに提供。電力使用量の可視化ができ、設備機器の交換、従業員トレーニングを含めた運用を実現しました。
その結果、年間13.6%の電気料金の削減を実現。当初に定めた期限の8か月前に初期投資の回収を達成したそうです。
※参照元:マクニカ公式サイトhttps://www.macnica.co.jp/business/energy/products/136384/
次のページ>
企業省エネ・知っておくべき用語集
「エネ監ポータル」では、「自社の範囲に合わせたシステム導入をしたい」、「既存設備の流用がしたい」、 「他社システムとの連携がしたい」、という導入目的に当てはまるシステムを提供している会社を提供会社の分類から1社ずつご紹介します。
引⽤元︓クレアビジョン公式サイト(https://clairvision.co.jp/service/ever-green-vision/)
エネルギー監視システム用のソフト開発から、パッケージ化されたシステムの提供までを実施。ITを軸にした価値提供をしています。
引⽤元︓マクニカ公式サイト(https://www.macnica.co.jp/business/energy/products/136384/)
マクニカは世界中の先端テクノロジーを組み合わせた提案・販売を得意とし、技術商社としての立場を確立してきた企業です。
引⽤元︓東京ガス(https://eee.tokyo-gas.co.jp/service/energymanagement/detail.html)
ガスと電気を対象にした自動制御によるエネルギーマネジメントシステムを提供。気象情報データと連動させた計画運転も可能です。
【選定条件】
「エネルギーマネジメントシステム」としてピックアップした事業者について:2023/6/30時点、「エネルギー管理システム」「エネルギーマネジメントシステム」「エネルギー監視システム」でgoogle検索を実施し、100位以内に表示された事業者52社から選出。
「自社の範囲に合わせたシステム導入をしたい」「既存設備の流用がしたい」「他社システムとの連携がしたい」「複数メーカーの機器を一元管理したい」という要望に応えられる事業者の内、各業種の分類から実績数が明確かつ多い企業をおすすめとして掲載しています。